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2024 高松宮記念: G1レビュー

競馬場:中京競馬場
距離:芝1200m
賞金総額:3億6820万円 (約260万米ドル)

マッドクールが前走香港での失敗から立ち直り、今年の高松宮記念を制した。昨秋のスプリンターズステークス(GI)2着の実力を示し、日本の短距離戦線トップに立った。

芦毛のマッドクール(牡5・父Dark Angel)はJRAでは比較的珍しいアイルランド産馬である。鞍上の坂井瑠星騎手はまた一つビッグレースを物にして、若い池添学調教師にとってはGI2勝目となった。この勝利によってマッドクールは12戦6勝の好成績を挙げている。

香港からの遠征馬ビクターザウィナーは、前年12月の香港スプリント(GI)でマッドクールが8着だったのに対し4着と先着していたにもかかわらず、両馬は並んで単勝9.6倍の5番人気だった。両馬とも香港スプリントで敗れたためこのようなオッズが付いたと思うが、ビクターザウィナーはその後香港シャティン競馬場でGIを勝っており、このような評価は少し意外だったとも言えよう。

ビクターザウィナーは今回スタートダッシュを決め先頭に立ち、マッドクールは内ラチ沿いのすぐ後ろの4番手の位置で先行した。最終直線に入り先頭のビクターザウィナーはコース中間に持ち出したが、マッドクールはそのまま内ラチ沿いを走り、残り300メートルで加速してリードを奪い、さらに後ろから猛追してきたナムラクレアを凌いでアタマ差で優勝した。

ビクターザウィナーは2着から3馬身離れての3着、一方3.7倍の1番人気ルガルは見せ場がなく10着だった。

レース後コメント

坂井瑠星騎手「一番理想的なポジションを取ることができましたし、直線も内ラチ沿いギリギリを攻めていって、思い通りのレースができました。しっかり脚を使ってくれていましたし、大丈夫だろうと思っていましたが、2着馬もすごい脚でした。まだ緩さを残している段階でGIを勝てましたし、まだまだ伸びしろがある馬だと思います。こうして無事にGIを勝つことができて良かったです。今後も応援していただければと思います」

RYUSEI SAKAI / G1 Takamatsunomiya Kinen // Chukyo /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

決定的な選択

マッドクールに騎乗した坂井瑠星騎手は内ラチ沿いを攻めると選んだ一方、ビクターザウィナーのカーチュン・リョン騎手は馬をコースの中央へ持ち出すことにした。雨による重馬場の中で、このような選択が結果的に明暗を分けることとなった。マッドクールと同じく内ラチ沿いを走ったナムラクレアも馬群後方から鋭い末脚を発揮できた。

マッドクールのそれ以外の勝因としては、好スタートのあと馬をリズムよく先行させた坂井瑠星騎手の好騎乗もあるだろう。ナムラクレアも同じく好スタートを決めたが、道中徐々に後ろに下がってしまい、この違いが最終的にマッドクールの僅差の勝利の一因となった。

2024 高松宮記念: レース映像

MAD COOL / G1 Takamatsunomiya Kinen // Chukyo /// 2024 //// Video by JRA

新スター誕生か?

近頃日本の短距離戦線には実力馬が沢山いるが、スターと呼ぶに相応しい馬はまだ現れていない。しかし、マッドクールはスターになり得る資質を持っている。同馬はまだ数少ない出走回数の中で成長を見せており、日本の2つしかない短距離GIで2着と1着の実績を残している。しかし、今年5歳になって全盛期を迎えている同馬にとって、スターになるためには今後も成長と実力を示し続けなければならない。4月に香港で勝てばスターの称号にぐっと近づくだろう。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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